永久歯
ミナト 螢

小さな地震で揺れていた歯が
旅立つように足を動かして

口の中から飛び出す痛みを
あの恋みたいに忘れられない

飲み込んだ言葉や隠した本音に
届かなかった乳歯の成長が

君を見届けて繋がりを断つ
さよならの時は赤い血を流し
空っぽの箱に来客がある

地震が来なくなった永久歯に
誰かが残す思い出の味は

甘いのか辛いのか解らずに
歯磨きをする夜は希望の夢

牙をしまっても一日ずつ知る
寒さのせいでガタガタと震え

走り回ったあの恋が燃やす
身体の中心で噛み合う思い
天に投げた歯が私に伝える


自由詩 永久歯 Copyright ミナト 螢 2018-12-01 08:47:58
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