シリウス
ミナト 螢

ウールのマフラーを強く巻いても
誰かの腕を離れたこの首は
隙間だらけの星空みたいな

編み目のひとつにほどける思いを
両手で救って届けたかった

チクチクと痛むウールの感触
太陽の熱と光も凶器だ

心が怯えて戻れない日々を
ドミノ倒しで追いかけるように
思い出の始点で輝く星は
だいたい喉につっかえて吐くよ

屋上で食べたみかんの皮を
頭上に乗せたらハロウィンのかぼちゃ

それが王冠の印だよって
教えてくれた人はどこにいるの

魔法を掛けて解くのを忘れた
消えない王冠の転がる先で

眩しい色を放つ命の夜
一等星の瞬きが聞こえる


自由詩 シリウス Copyright ミナト 螢 2018-10-30 08:19:56
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