四月
狸亭

北インド
ウッタール・プラデッシュ州の
首都ラクナウを
北西から東南に流れる
にごり水。

ゴームティー川は
午後のつよい日差しをうけて
にぶく光る。

水牛の群れが土手の斜面にひろがって
こうばしい牛糞のにおいが
風に乗る。

粘土造りの小屋がひっそりと
地を這うように密集し
茶色の竹籠を抱えた少女が
牛の糞を素手で拾っている。

湯気の立つ糞を
パンをこねるように
うすくのばす。

渦巻き状に まるく
あるいは四角に ならべてゆく。
土埃が舞う。

カメラをかまえると
はにかんだ明るい顔を向ける。

一緒にしゃがんで
話がしたい。

触れ合うことのできない
唖の人間同士の
もどかしく
せつない隔絶。

岩肌の露出した険しい道を行く
クルドの避難民の群れが
突然よぎる。

四月。

黄金週間開始。

明治村 犬山城 長島
木曽川 長良川 揖斐川
木曾三川公園の展望塔
養老の滝
湯の山温泉
熱田神宮 名古屋城
御在所岳。

いちめんの緑はもえあがり
つつじの花がまっさかり。

あつらえたような上天気の四月の空だ。

何処も彼処も
きれいな服を着た人々で賑わっている。

拡散した想念は
うつくしい新緑に消えて行く。




自由詩 四月 Copyright 狸亭 2003-11-18 21:23:36
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