夢の対価

よく墜ちるプラスチックの星、
鍵も暖房もない部屋、
散らばった本とぬいぐるみ、
頭の先まですっぽりと被った布団、
髪の毛の一本すら残さず覆って眠るようになったのは、
天井いっぱいに作った星空が眩しかったからで、
ママのおなかなんて恋しくない。

  お星さま、
  わたしのおねがいは、
  いつになったら叶うの、
  冷たいベッドの、
  柵と、
  やわらかい紐のおまじない。

  もうママに怒鳴られる朝はいらない。
  もうパパにキスされる夜もいらない。

知っている人が誰も出てこない夢へ一人旅、
秒針や足音にドキドキすることなく、
ずっとずっと眠ってみたいのに、
階段の軋む音やアラームが聞こえて、
外犬のように眠るおまじないはいつも失敗。
それでも、
ねがいごとは誰にも教えなかったから、

わたし上手に生きていたでしょう?
今はどうかな、
星を剥がして捨ててからは、
ちょっと下手になったかもしれない、
多分ね。

  わたし、
  生まれたくなかったなぁ。

  言ったことあったっけ?
  忘れちゃったな、

  手の繋ぎ方も、笑顔の受け取り方も、
  呼びかける為の言葉も、

  眠る前なら、きっと覚えていたと思うよ。


自由詩 夢の対価 Copyright  2018-10-12 20:55:57
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