腫れ上がる孤独
はるな


わたしがあなたに触れるとき
十のマイナス何十乗秒前のあなたを認識しながら
触れているのは何秒前のあなただろう
あなたがわたしの声を聞くとき
あなたに流れるのはいったい何秒前のわたしですか
膨張し続けるわたしをちぎっては投げ
あなたの宇宙で縮んでいくのを悲しんでいるのもそれをやさしく諭す手を持つあなたの微笑みもすべてすべてあらゆる過去に閉じ込められた事象です
わたしたちは
反転する過去で愛をして 過ぎた未来になみだするいつも
わたしにもあなたにも出会えずに
そうと知りながら手を取り合う刹那が重なるとき
あなたとわたしのからだをめぐるいっさいの孤独が晴れ上がってゆきます



自由詩 腫れ上がる孤独 Copyright はるな 2018-06-28 08:28:49
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