すぎる ゆれる
木立 悟
水の悲鳴と
鐘の音が重なり
どこまでも
眠りを遠去けてゆく
骨と木と岩
蒼い火を吹き
砂と浪を照らしながら
海のかたちを描いている
白く広い風景に立ち
白髪の角を振りかざす
光は二重の薄い枷
行方をふさいでは消えてゆく
奇妙に明るい蒼夜から
繋がれた馬に降りそそぐ雨
田舎道の血は洗われ
イーゼルの脚元に流れつく
双頭の馬が曇を昇る
屋根の上の煉瓦の鳥
荒れ地も墓地も
空の端から昇りはじめる
真昼の空の 蜘蛛の花
二つの時間 空洞の浪
少し離れた扉の隙間を
遠く明るく雨はすぎる
白い壁の種痘を結び
星座を創る小さな手
音だけの水を追いつづけた
二十分三十四秒の夕暮れに