うみがたり
ミナト 螢
夕日が震えながら沈む海で
光を貰った両眼の奥に
寄せては返す波の音が届き
溜め息やくしゃみで塗り替えてゆく
静寂が似合うと思えるのは
花火のゴミを燃やした時に出る
煙のせいで涙が滲んでも
誰も見ていなくて安心できるから
水面をくぐらせたハンカチは
どうして赤く染まらないのだろう?
腹を割るように血を流したのに
海は全てを透明に還す
入口か出口かさえも分からず
漂ってしまうサンダルを脱いで
海に浮かべれば白い船になり
石を投げれば幾つ跳ねるかな?
三日月が僕にウインクをして
グレープフルーツジュースを注ぐ
しょっぱい味だけが残った海は
本当はピンク色だったのかもね