リアルの国のアリス
もとこ

魔法はいつか醒めるもの
それも残酷なタイミングで
少女時代の楽しいお茶会
永遠に続くはずだったのに

甘いお菓子たちの余韻が
不意に舌先から消え失せて
一緒に王子様の噂をしていた
乙女たちが闇に溶けていく

気が付けばアタシは独りで
狭くてゴミだらけの部屋にいる
目の前のひび割れた鏡に映る
白髪が目立つ厚化粧の女

え?
あれ?
何これ
誰こいつ

何てひどい姿だろう
ルージュの色なんて最悪
荒廃しきった心の中が
透けて見える灰色の肌

思わず後ずさりすれば
空の酒ビンが踵にぶつかる
ああ、また戻って来ちゃった
絶望が散らばる現実の中に

違う違う絶対に違う
こんなのアタシの人生じゃない
ああ、薬はどこにあるの?
確かまだ残っていたはず

大丈夫だよ夢だからこれ
さあ早く目を覚まさなくちゃ
アタシたちのお茶会は
まだ始まったばかり
ひび割れた鏡の中から
三月ウサギが手招きしてる


自由詩 リアルの国のアリス Copyright もとこ 2018-05-08 21:30:31
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