卯月のゆめ
田中修子
ねぇ おぼえている
この世におりてきたころのこと
あしたが待ち遠しかった日々のこと
まばたきするたび うつりかわって
桜の花びら
糸と針でネックレスにして
穴あけたところから
次の日にはちびて朱色がかって
けれど
かなしみ
ではなく
ふしぎ
であった日々のこと
うんちもおしっこも
しゃっくりもくしゃみも
せいいっぱい
していたのよね
心臓が早鐘を打つ
ああ そうだった
たくさん泣いていたころ
まばたきのあと
まがりかど
ねむりのあと
いついつまでも
花散り緑はひらける
すべては高鳴る
そんな
卯月のゆめ
だった