各駅停車
ヤスヒロ ハル

暖かな陽の光が差しこむ
昼下がりの各駅停車

疎らな乗客
緩やかな進行

部活を終えた女子高校生が
座席でふたり 眠っている


この状況は
とても身近なことの暗喩
ではないだろうか
そんな声が頭をよぎる

わたしは半分眠った頭で
その意味を
思い出そうとするが
記憶に手が届かない

生まれてから死ぬまで
一度は体験するような
やわらかい何か


気が付くと私は
降りるべき駅を乗り過ごし
半覚醒の混乱のうちに
列車を降りた

あんなに傾いて眠っていた
女子高校生たちは
影も形もなかった

やわらかい何かと共に
急行の止まらない駅で
降車したのだろう


自由詩 各駅停車 Copyright ヤスヒロ ハル 2018-04-11 16:30:59
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