ミラフローレスの夏の朝
Giovanni

――ペルー・リマにて――

ミラフローレスの夏の朝は
パッションフルーツジュースの
なめらかな甘い黄の香りがする

1月の夏は
どんよりした曇天の下で
眠りのように紫立った
ライラックの囁きのようだ
ちっぽけな栗鼠が
枝の上でサルサ踊る

暇もて余してクロスワードする
安宿のホテル・デスク・クラークが
Hola と言って微笑んで見せる
それからすぐに 退屈そうな顔に戻る
砂のような夜勤はもうすぐ明ける
明けてしまえば 彼女はきっと
好きな男に 水を纏った向日葵のような
大輪の笑顔を見せるに違いない

アレキパ通りの真ん中には
どこまでも続く歩道があって
時折通る車は
陽気なクンビア流しながら
エンジン鳴らして行き過ぎる

時を忘れ 読書に耽る老人
けたたましいクラクション
犬つれた子供や
ベンチで寄り添う恋人たち
その上から

雪のように 降り注ぐ
ティプアナ・ティプの
小さい 黄の 花びら

僕は ここにいる

ただ 感じればいい
確かに 僕は ここにいる と

ミラフローレスの夏の朝は
ティプアナ・ティプの黄色い雪の
なめらかな甘い香りがする


自由詩 ミラフローレスの夏の朝 Copyright Giovanni 2018-04-03 21:50:38
notebook Home