夜が明け、朝は来るから。(黒猫の黒い影)
秋葉竹



みおろすこの街の
眺めは最高のイルミネーション、
頽廃のタワーマンションに
どんな正義も眠るころ、
さまよう夜のいっぴきの黒い猫
あなたを求めて黒い影に化ける。
逃げているわけではないけれど、
こんやこの展望台で教えてもらったのは、
眠れない絶望の過ごし方だった。

どこへいく過去の情熱
どこへいっても、朝には消える。
始まりが、始まらず、
紅い遊歩道の横の小川を泳ぐ
解き放たれた朱色の金魚を
忍び寄る黒猫が囓ろうとする時、
ようやくすべてを諦めた正義が、
朝日の顔をして、
少し照れながら、
起きるって、言い始める。

夢を、みた。
夢は、
仲の良い紋白蝶を追う昼下り、
美しいクラリネットの音が奏でられる街で、
裸足で古びた石畳を駆けている
あなたに気づいてもらうこと。

そこで、あなたは、立ち止まり、
おそろしいほど優しい笑顔を浮かべ、
幼い少女の声で、私に問いかける。

まだ、夢から、覚めないの?

そんな、心を置き去りにした
早い春のその場ごまかしの白い朝の症状。

わずかに病んだ寂しい欲望が、
貧血による目眩を起こし、
もう、座り込むしかない。

そして、
来ないかもしれなかった
ため息まじりの朝は、
案外平気な顔でやって来て、
私の暖かく平和なベッドを奪い、
座り込んだ私と黒猫をさっそく、
祝福のドアを閉める勢いで蹴り上げて、
今日1日の青空の下での生活に、
その心を、染め上げてしまおうと
猫なで声で、実は残酷な要求をするのだった。

容赦ない、なにをも認めない疾風吹き荒ぶ中、
忘れられない無邪気な私の夢をことさら、
蝶の化石や、凍った道扱いするのは、
お願いですから、やめてくださいね?


自由詩 夜が明け、朝は来るから。(黒猫の黒い影) Copyright 秋葉竹 2018-03-25 04:06:43
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