ガラケー
山人

半覚醒状態で掛布団の下でうずくまる
地球外生命体の逃亡者のような私は
テレビの声だけ聴きながら丸く横たわっている
いっとき、毒水は体を掛けめぐり
麻薬のように高揚したかと思ったが
今は、毒々しい血液を運ぶために
鼓動はうるさく高鳴っている

きっと生まれた星は何処かにあって
こんな 
夜の雨が似合う天体なんかじゃなかったはずだと
うっすらと眼を開けてみる

はるか何光年の前に
たしかにルーツがあって
それが光となって到達し
芽吹いた命
旅を重ねていたころの記憶はないが
たしかにどこかの宇宙から来たのだ

記号のような名をずっとつけられて
こんなに加齢した体を押し付けられて
夜の雨音を聞いている

妻のような人が
部屋の電灯を消した
ずっとよその星の人と
思っていたに違いないのに

黒くくすんだ布団の中で
携帯のふたを開けて
遠い星からの
伝達がなかっただろうかと
やはりうるさく響く夜の雨音を聞いていた


自由詩 ガラケー Copyright 山人 2018-03-23 04:50:13
notebook Home 戻る  過去 未来