ことに春のはじめは
塔野夏子

すべてのものはうつろう
そのうつろいは後ろへとたなびく
そのたなびきはにじみつづけて
私はかなしい
すべてのものののうつろいとそのたなびきが
かなしい
すべてのものはうつろいつづけるから
私はいつでもかなしいのだが
ことに春のはじめはかなしい

私みずからも心ならずもうつろい
そのうつろいを後ろへとたなびかせている
それをふりむくたびかなしい
時にたえがたくかなしい
ことに春のはじめはかなしい

あらゆるうつろいのたなびきが
なんともいえぬやさしい色あいでにじみつづけて
私はとてもかなしい




自由詩 ことに春のはじめは Copyright 塔野夏子 2018-03-21 10:36:37
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