棄てていこうよ
日々野いずる
相合傘は理想
であるがゆえに蔑視している
一人で持てないなら持つなという思想が
魑魅魍魎跋扈する夜を渡りづらくする
ただあなた一人傘を持っているから
重力にそんなに苦労するのだ
あなたが傘を捨てたなら
広い空が見えるでしょう
暗澹な溜息をつきたくなるような鈍重な雲が
あなたの軽くて安いビニール傘の代わりに
宙を受け止めるでしょう
鞭うたれる体を捨てず
足を引きずって進むぬかるんだ道
目を閉じて
目を閉じて
雨音が耳に直接染みて
酷くさみしい心地がした?
今は何時かって気にすることなく
雨で遊ぼうね
走って走って
水を飛ばす
跳ねて飛んで
水を踏みつける
捨てられた傘と捨てられた正気に
笑って唾を吐きかけたら
そら、かけていこう