棄てていこうよ
日々野いずる

相合傘は理想
であるがゆえに蔑視している
一人で持てないなら持つなという思想が
魑魅魍魎跋扈する夜を渡りづらくする
ただあなた一人傘を持っているから
重力にそんなに苦労するのだ

あなたが傘を捨てたなら
広い空が見えるでしょう
暗澹な溜息をつきたくなるような鈍重な雲が
あなたの軽くて安いビニール傘の代わりに
宙を受け止めるでしょう

鞭うたれる体を捨てず
足を引きずって進むぬかるんだ道

目を閉じて
目を閉じて

雨音が耳に直接染みて
酷くさみしい心地がした?
今は何時かって気にすることなく
雨で遊ぼうね

走って走って
水を飛ばす
跳ねて飛んで
水を踏みつける
捨てられた傘と捨てられた正気に
笑って唾を吐きかけたら

そら、かけていこう




自由詩 棄てていこうよ Copyright 日々野いずる 2018-03-05 19:41:40
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