囓る
草野大悟2

くすり、
笑うのだ なにかが。
ほら また 小さく。

虹の根元を掘っていると かすかに 聞こえる。
やはり、今日という日は、なにかを捨てる日だと、笑うものがいる。
佇む風は とまどいを隠せずにいるし、
雲はすじとなってどこまでも どこまでも のびていこうとする。
私たちの耳は石になっていた。
虹の根元には夢が埋まっている、と聞いた。
嘘つきは そう あいつだ。
いつだって八方美人の あいつ。
ここでは たぶん 蝙蝠 と呼ばれている。
 
わたしが囓っているのは 春だ。
ほんわりとやわらかな光をすこうしばかり。

三倍速の春が
海を囓る風景を
見た。
春は その時 春を捨てていると思われた
が、春自身が 分かっていなかった。
そうとも 分かっていなかったのだ 誰も。

だから
囓ることにしたんだ
笑う なにかを。  


自由詩 囓る Copyright 草野大悟2 2018-02-27 19:47:34
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