冬去しらさぎ
佐々宝砂

今日は風が強くて
ほとんどどうしていいかわからないくらいだけど
一年いちどのしらさぎの日
休んでるわけにはいかないから
カイとわたしとふたりして
言葉にならないもの抱えて出かける公会堂の庭

もうたくさんの人が集まっていて
準備は整ってるみたい
遅れてしまってすみませんと挨拶しながら
抱えてきたものをさしだす
村長さんがそろそろ始めるぞおと叫ぶ
どどんどん
火が放たれる
強い風のなかで
どどんどん
去年の村の
言葉にもならなかったどろどろが
どどんどん
燃えてゆく

もちろん延焼するとやばいから
きちんとバケツに水が用意してあるけど
いつもの年と同じように
言葉にならなかったどろどろだけが
どどんどん
威勢よく燃えてゆく

炎のなかから
ちっちゃくて
まっしろな
鳥が一羽あらわれて
さいご
飛び去って

今年もこれですっきりと過ごせますねえ

一年いちどのしらさぎの日
うなずきあいながら帰ってゆく
なんとなくまだ
言葉にならないどろどろが
どこかに残っているけれど

でもいいんだ

来年もまた
しらさぎの日はくるんだものね






連作「カイとわたしの物語」より
第1弾「春咲ねこのて」http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=4192
第2弾「うみろば風信」http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=4193
第3弾「ききみみ図書館」http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=4194
第4弾「冬去しらさぎ」http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=33608


自由詩 冬去しらさぎ Copyright 佐々宝砂 2005-03-18 02:06:35
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