嫌になっちまった
こたきひろし

夜更けに金縛りにされて
目が覚めているのに
体の自由が効かない

アパートの部屋の外は暴風と激しい雨で
なのに誰かがドアを思いきり叩いてる
訳がわからない言葉を叫び出して
ドアノブを回そうとしてる
ドアを強引に開けようとしてる

夜更けに金縛りにされてしまった
目が覚めているのに体の自由が効かないのは
きっとそいつのせいだ

そいつはきっと俺を殺す為に道具を手に持っているに
違いなかった
俺はそいつの思い通りにはならない
殺されてたまるか
簡単には死なない自信はあるんだ

なのになんでだ
こんなときに俺の体か動かねぇ
俺が助かる道はたった一つだ
表で暴れてるそいつより先に
情け容赦なくそいつを
殺しちまうことだろう

だけど体が動かねぇ
このままだと
俺は殺られちまうに違いねぇ

もうだめだ
焦ればあせるほど
縛りがきつくなる

人間の脳みそは
重箱のなかの豆腐みたいなものらしい
頭を道具で叩かれて
づ骸骨がわられたら脳みそが飛び散るだろう
そうなったらいっかんの終わりだ

ついにドアが破られた
じゃなくて
合鍵を使って普通に入ってきた
予想に反して女だった
よく知っている女だった
何の事はない
俺が愛してやまない女だった
女は言った
花束を手にしなから
お誕生日おめでとうって

いっぺんに
俺の金縛りが解けた



自由詩 嫌になっちまった Copyright こたきひろし 2018-01-09 00:12:35
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