昔の、話(愛のテーマ
虹村 凌

皆さんは、ゴッドファーザーを見た事があるだろうか?
マーロンブランドや、アルパチーノが出ている、あれだ。
マーロンがジジィになり、相変わらず早口で、何言ってるかわかんない。
もう少し口を開いて喋って欲しい!がアル・パチーノが恰好良いので許す。
そんな映画だ。
愛のテーマ、とは、ゴッドファーザーの一番有名なテーマ曲だ。
今も、実家の方で、ボーヤンがこの曲を使用している。
愛のテーマが何故に、暴走族のテーマになったのか、未だ不明だ。
ギャングのテーマじゃないのにねぇ。愛のテーマだぜ?
実際、GF2でギターの弾き語りを聴くシーンがあるが、これは良いぞ。

っと、そんな話をしようとしたんじゃない。
昔の話をしようと思ったんだ。
Mixiと言うコミュニティサイトに参加しているのだが。
そのBBSで、ある事を思い出した。
今日は、愛について語ったりしたい。
胸くそ悪い話だろう、と言う事は言っておく。



3年前、俺がまだ高校を卒業する直前の頃。
俺は、友達の女に惚れた。見た目は別に、可愛くなかったんだがな。
心ん中で隠し持っているのに耐えかねて、俺は二人に白状した。
彼は許してくれた。
…まもなく、彼女が俺に興味を持ち始めた。きっかけは俺の詩だ。
俺は、彼女と俺の友達が未だ付き合っている事を知りつつ、デェトを重ねた。
俺達は恋をしてしまった。かなり、本気で。

俺は加速度的に彼女に惚れ込んだ。友達が彼女の彼氏だとわかっていても、だ。
俺は自分を止める事が出来なかった。彼女は、俺を止めなかった。
完全に理性が飛んで、狂い始めたのはキスをしてからだ。
俺は彼女に完全にハマり、狂愛を捧げていた。
彼女の言う事が全てだった。彼女が俺の全てだった。

阿呆だな、今に思うと。(苦笑

彼女はまだ別れていなかったのは知ってる。
でも俺は自分を止められない。狂ってたと思うよ。
友達の忠告なんか、これっぽっちも聞いちゃいなかった。
狂ったように詩を書いて、一週間で100頁ノートを潰した。
そんな日々だった。

彼女とその彼氏は、結婚するつもりだった。
彼女はどういうつもりか、俺にこの事を言った。
そこで、俺は彼女とある計画を立てた。

彼女達が結婚式をする。俺は友達として招かれるだろう。
…俺達の事がバレなければ、の話だ。
式の最中に、キャンドルサービスで、火を付けに回るでしょう?
彼女達が俺のいるテーブルに来たら、俺は自分に火をつける。
彼女は自分に火をつける。そして俺達は、炎の中で口づけて死ぬ…

という、3文映画のような計画を立てた。
「卒業」のように、乱入して奪う事もしない。
祝福されぬ愛なのなら、俺は死を選ぶ。

俺は何度か、彼女に「殺してくれ」と頼み、ことごとく断られた。
俺も何度か殺そうとして、辞めた。
死ぬなら、二人が良かった。彼女はその場で死ぬ気は無かった。

彼は途中でこの事を知り、激昂し、彼女と喧嘩別れ状態となった。
俺は彼女と番った。愛が、終わる直前の、愛の無い番いの瞬間だった。

愛したヒトを殺す事は、そのヒトの人生を手に入れる事だ。
愛したヒトの最期を見る事は、そのヒトの生き様を手に入れる事だ。
もし、あるヒトを愛し、そのヒトを他の誰にも手渡したくないのなら、
殺してしまう事が一番の方法だ。
彼女の人生、生き様を手に入れる。そしてそれを一人で支配する。
俺を殺しても、俺が殺した女の一生を手に入れる事は無い。
俺の中で、生き続ける。他の誰も知らない。

幸い、俺は彼女を殺す事も無く、俺達は終わった。
彼女は俺の知りたい部分を全て知り、満足して、飽きたのだった。
そこに、彼女は愛を持っていたのか、俺は知らない。
ただ、俺は彼女を何よりも愛していた事は事実だ。
友達は、俺を見捨てる事なく、俺の周りにいてくれた。
その女と、男は、俺達を捨て、二人だけになった。

これ以降、俺は誰かをこれ程好きになった事は無い。

最高の愛情表現とは、殺す事だ。「愛している」と言わない事でもある。
そう思っている。
俺がその女を殺したとしたら、その女は、俺の中で永遠に生きる。
「愛している」と言う事は、その言葉で相手の何処かを縛る事だと思う。
だから、俺はあまり言いたくない。言わないだろう。
心も愛も要らない。今は、愛なんて重くて苦しいだけだ。
俺は日々の課題をこなす事で一杯一杯だ。余裕が持てないよ。

思い出した。彼女は言ったんだ、俺の事なんかちっとも愛してなかったと。
そう、愛なんてなかった。俺の愛だけがあった。そうだった。
でも、未だに謎に思っている事がある。
俺は初めてアメリカに行く直前に、俺は彼女と会った。
成田駅で、だ。彼女は彼女の香水を、俺の辞書に吹き付けた。
あの行動の意味は何なのか。今も、幽かに、その匂いは残っている。

愛なんてなかった。
殺しておけばよかったとは思わない。
ただ、俺はこの先、まともにヒトを愛せるのか不安で仕方ない。
背徳感が無ければ、ヒトを愛せない人間になってしまったかも知れない。
何時か、誰かを殺すかも知れない。

ただ、俺はまだそんなヒトには会っていない。
もしも、俺が誰かを殺しそうになっても、俺にはそれを止める友達がいる。
俺は、きっと大丈夫だ。


不幸自慢じゃない、昔の、話。
エッセイで、いいのかな。独白なのか、いやエッセイだろう。









そんな事を、
思い出した、
ある日の
夜明け。


散文(批評随筆小説等) 昔の、話(愛のテーマ Copyright 虹村 凌 2005-03-15 17:59:34
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