女神のはかりごと
st

月のひかりが
しずくとなって

やさしくふりそそぐ
森の奥の湖は

やぶれた恋を捨てると

次には永遠の恋が
得られるという
伝説の湖


一人また一人と
若者たちが

恋を捨てるため
やってくる


湖面には

砕け散って
こなごなになった

若者たちの恋が
一面に

キラキラひかり
美しくゆれている


やがて
天上から

神々しい光とともに
愛と美の女神の使いの
天使たちが

こなごなになった
若者たちの恋を

ひろいあつめるため
おりてきた


あつめられた かけらたちは
みるみるうちに
美しい宝石となってゆく


人間たちは
知らないのだ

捨ててしまった恋が

永遠に輝く
思い出の宝石になることを

はげしく
かなしく
終わった恋ほど

美しい宝石となることを


愛と美の女神のはかりごと

次には永遠の恋が
得られるという
伝説の湖は

深い霧につつまれてゆく







自由詩 女神のはかりごと Copyright st 2017-10-26 12:12:02
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