無題
◇レキ
雨上がりの清い空に流れる雲の
感情の軋轢に砂糖をまぶして
二人小さく笑い合えれば
距離感にぱちぱち淡い火花が散って
求めて欲しい
求めていたい
どこまで意思疎通に出会っても
少し寂しくなるだけだけど
心が満ちて生きた
僕はなんと小さな場所にいるのだろう
※
火の風車がある
偶然誰かが触れたのが始まり
轟々と回り続ける
手を風車から離せば忘れていたように焼けただれ
どこまでも続く夜空みたいに悲しくなって
負けたみたいに鈍器で殴られたみたいに苦しくなって
それはもう動悸がどうにも止まらなくなるから
また
涙を振りかざし
火の風車に手を触れる
触れれば火は優しく手を撫でて
しゅわしゅわぱちぱち包んでくれる
代わりに綺麗に手はこんがり焼かれて
風車の風圧でよろめいて手を離すから
忘れたように手は焼けただれ
ああまた
悲しい
苦しいを
繰り返す
苦しみや悲しみは
快楽と仲良しで
何よりの媚薬なんだね
※
心が平和なら
戦場にいても幸せだろうか
毎日を鮮やかに生きたくて
人はつい
心を乱したがる
そうして誰かは憎み
誰かの心は満ちる
※
雨 雨 あがるな
心を砕き続けてよ
痛みを 忘れないように
鮮やかさには血の色も
あまたの原色 心が染まる
その危うさに 恐怖に飲まれ
明日の自分さえ分からなくとも
雨 雨 あがれ
陽射し雲間に美しく
脆く崩れる無意味たちに
美しさを何気なく まとわせて
他とのまろやかさを そして
自分の生の執着でさえ
肯定しようと言おう
平和は退屈か
戦場に愛は転がってないか
荒れ果てた雨風の後の雲の美しさは
澄んだ空気の先の景色は
その先に続く毎日が
くるしい
※
僕は知った
一度開け放たれてしまった扉からの
甘い空気は心に染みついて
心が待ち望み渇望していたそれは
触れ続けないと溶ける熱さで
満ちてしまった心が死ねば
こんなに一人が寒かったとは
幸せがどこにでも転がる魔法であることを
それは保ちつづければ本当になってゆくことを
僕は知らない
※
心はどこにでも行けるから
会ってなくても分かり合うから嬉しい
心はどこにでも行けるから
知らなくてもいいことまで響いてしまって苦しい
心は自分の中にいるのに
簡単に現実から手を離して飛んでゆく
心はいつも自由で自分らしくありたがるから
追いつかないまま
現実は心との距離に虚しくて
ちぇって舌打ちしている
※
心よ
身体を忘れるな
ごまかさない本当の幸せを知れ
楽しみにうつつをぬかせ
心 踊れよ
お前は明日を楽しみながら魔法の幸せを摘み続ける蝶であれ
身体よ
心に向かえよ
諦めないで幸せであろうとしようよ
押しつぶされるなよ
身体 負けるな
お前はどっしり力を持ちながら耐える足であれ
心 忘れるな
お前はいつか身体に本当を手渡す役目を持てるのだから
身体 忘れるな
お前にいつか耐えたその分の幸せを心がきっと渡しに来るから