水と虹
木立 悟





羽は失く角は折れ
歌は枯葉の底にあり
声は遠く 風は旋り
ちからとかたちを連れ去ってゆく



終わりは近く 忘れられ
まばゆいひとりがつづいている
息がつまるほどの
架空の羽に満ちてゆく



流星と雷鳴
散る埃 散る炎
窓の向こうの窓に映る
不確かな雨と滴の群れ


がさがさと巨きな宙が割れ
もうひとつの宙が見える時
羽のあるものは羽を重ね
無いものは互いの鎖骨に触れる


今日を生きるための儀式の手順は
少しずつ少しずつ変わりゆき
日々は砕け 声は到かず
曇の明るさは震えゆく



過去と今の雨が重なり
土と水の鱗は混じり
濡れることなくたたずむもの
どこまでもひとりまばゆいもの



光る鉱を持ち降り立つ花
水と虹と笑みは踊り
歌は風に舞い上がり
失い羽と角を抱き寄せる


















自由詩 水と虹 Copyright 木立 悟 2017-09-18 17:38:57
notebook Home 戻る