鈴蘭
草野春心



  灰が 赫になって
  なにしれず 殖えていって

  (オフィスビル大のスタインウェイ・ピアノ
  (あなたたちは小さく並んで 響きになる
  (幾つかの きたない歯のように

  有意味の形象ら うろを貫く
  そら闇をしろく房なってかぶさる
  ……くるしみのなかでだまって

  、鈴蘭
    鈴蘭 鈴蘭……

  (幾つかの ほろびた歯のように
  (あなたたちは震えながら落ちていく
  (何年か後……都市色の 渚で

   わたしは四角くなろうか
   それともまぁるくなろうか
   独り 問うて しまって 居る

    膜状なくろがね
  、鈴蘭、
  くるしみのなかで
  だまって




自由詩 鈴蘭 Copyright 草野春心 2017-09-18 11:49:42
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