しののめスープ
むぎのようこ

そらが明るくなって
さみしかった
ことりが羽ばたく音が
しずかにひびいて
まちの
そこここでは
あさが燻る

たべそこねた月が
うすくしろく
ケロイドみたいに
空に
はりついていて
わたしは
おなかがすいたから
鍋を火にかけて
それを煮る

うっすら
葡萄のいろが
ひろがったそらに
みなしごみたい
膝をかかえて
皿に
そそいだスープを
ひとさじずつ
くもったぎんいろを
目でなぞっては
飲み干す

ゆびさきから透けて
いつしかするりと
からだも
ぬげて
それから
声もほどけて
あ、
と、こぼすまに夜が
あけたのは誰も
しらないから
ひみつ、






自由詩 しののめスープ Copyright むぎのようこ 2017-09-14 23:29:30
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