秋の星座
秋葉竹

七色の満月に
よりかかっている

骨になり泳ぐ魚
軽すぎて命が冷たい
星座になりきれなかった
群雄たちの成れの果て

七色の満月に
よりかかっている

眼鏡をはずし
からめるさよならの瞳

あけっぴろげで間違えられない
長いお別れの眼差し

その
助けてもらえませんか

時は夏が過ぎ行くのを見送り
まるで消えない呪いをかけられた様子で
ふたりきりの砂浜の
ちょっと軽めの足跡を
風化させずに残すだろう

いつまで残すだろう

いつまでも残すだろう

風鈴は夏の星座になっていたっけ
言葉にならない深い悲しみは
星空をとまどわせてはいないか
二度とあわない一瞬の誓いは

遠い空と海の神聖な境界を
ふたりの足元にたぐり寄せて
今夜いちばんちいさな声で
ささやかれることだろう

二度ときけない夢の中の愛の別れの言の葉

月は静かに ただ少してれくさそうに
笑ったよう

その
助けてもらえませんか

仰ぎ見ると絢爛豪華な絵物語
忘れられない 剣と魔法の英雄譚
一角獣の
近くには行けない私の慰めの静止画
もはや
どこへも行けないあなたの呪われた若さ

骨となり倒れないパラソル
冷たい風に吹かれて
命あふれる金色の砂粒
ふるえつつ海へ帰る整然と

その風景はかつて
天界の神話と呼ばれた叙事詩たちと
その耐えられそうもない孤独という一点で
なにひとつ変わることなく

新たな星座の名前となることに
誰も反対できないだろう

けれどそれを望むものはなく

だから

その

誰か助けてもらえませんか

私はほんとうは
別れたくないといいたいだけ

だから
七色の満月に
よりかかっている

孤独な星座になんかなりたくない

お願い


自由詩 秋の星座 Copyright 秋葉竹 2017-09-05 00:06:49
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