晩夏
岸かの子2

いつの間にか空気が軽くなり
空も星もそれもまた然り
季節の変わり目は人の心もうつろいやすいけど
あぜ道に咲いた彼岸花の赤がやたらと
まぶしくて

君が残したものはとても多くて
私一人では段ボールにも詰め込めなくて
ため息ばかり続いているよ
彼岸花の絵を描こう
今はそれが精いっぱいだよ

玄関先で小さな蝉が飛べなくなって
この子と同じかもって同情してさ
庭の木にそっと置いた
そこから飛んではいかなかったけど
夕方もずっとそこから

街中の交差点よりは未だマシだろう

心は君へ預けたまま
ふわり、と舞う季節外れの夕立が
まるで
君が叱ってくれた時の様に
胸の中を赤く走るよ


自由詩 晩夏 Copyright 岸かの子2 2017-09-03 01:26:36
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