ゆくえ 焼砂
木立 悟





熱を嫌う午睡の肌に 
蜘蛛は幾度も近づいてゆく
夏も冬も 獲物はいない
巣だけが 巣だけが増えてゆく


時の網目に掛かる埃
壁を覆う飾りの埃
彩りの無い彩りに
霞んだ真昼の全天星座


稲妻の軌跡が
ふくらみ 破裂し
夜が描く夜のつづき
夜が描く夜のふちどり


鳥のかたちが残る庭に
雨は降りて 降りて来る
小さな紙を大きな紙に
折り込んでは川に流す


海辺を照らす炎の柱が
夜明けの方に消えてゆく
光が光にならないうちに
音は黙り 追い抜いてゆく


左右の爪が 宙にぶつかり
手のひらからこぼれる空白 空白
現れては重なる 
短い午後


流れ着いた紙が燃えている
大きな蜘蛛の巣の隙間から
波は打ち寄せつづけている
静かな熱の 静けさと熱を


















自由詩 ゆくえ 焼砂 Copyright 木立 悟 2017-09-01 17:17:22
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