滑落
ひだかたけし

逆さまになって
ぶっ倒れ
気付くと
天を仰いでいた


濃密な青
漆黒の宇宙空間に
そのまま接続していく
濃密な青

標高三千メートルのアイスバーン
アイゼンの爪先が食い込んだまま
ピッケルが真っすぐ突き立っている

銀白
辺り一面の銀白
流血している?
銀白に赤
谷底へ落ちていく色彩たち

肉体の感覚がない
麻痺している全身
視界が霞む
内と外が重なり
逆転する

濃密な青の広がる空間から
標高三千メートルのアイスバーン
食い込んだアイゼンの爪先
直立したピッケルを観ている

意識は次第に
漆黒の宇宙に溶け込み
(ピッケルとアイゼンが
谷底に落ちていき)

わたしは観た、傍らに
強烈な光の塊を
脈を打ちながら聳え立つ
生命の核の光塊を!






自由詩 滑落 Copyright ひだかたけし 2017-08-31 16:32:42
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