アカシアの雨
北井戸 あや子


サイレンが鳴り、正午を呼ぶ
けだるい声はアカシアの雨を歌い
直後に威勢ばかりで縁取られたシュプレヒコールが
アンポハンタイを叫ぶ
(アカシアの雨とは、どんな色だろう)
浸りすぎてしまったのだ
ラジオを消すことが出来なくなったのは
気づかない君の素振りでか
私の虚妄はいつの間にか、根が随分と絡んでしまう
見えなくなる君が最後に捨てた思想
そのあまりにありつくことも出来ずにいた
君は、もう、いないというのに
(なんていう雨?)(きっと緑だ)
擦り切れかけたフィルムの中にある
君の目が
今を見ることは
もう、ないというのに
私は卑しさ浅ましさと理由をつけて
もう虫の群がりだした
それを抱くことも出来ずにただ立ち尽くしていた
(こらえる息に肺があわだつ)
(己の納まる場所を速度と知る)
泳ぎだした、今日四回目のアカシアの雨が
また耳たぶをかすめていく


自由詩 アカシアの雨 Copyright 北井戸 あや子 2017-08-21 01:40:52
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