月のなかの鳥
あおい満月

私の瞼に咲く花は
いつも明るく黒い色をしている
明るい黒い色は
ナイフで切り刻まれた
唇の笑顔になって
翼のようにひろがっている
空を見上げては
飛びたがっている
私の明るく黒い花は
目に映る世界を飲み込んでいく
私はそれをとても嫌がった
飲み込み続ける明るく黒い花の手を
掴んで引きちぎろうとした
その瞬間、
引きちぎられた花の手の切り先から
別の花が生まれた


その花は色のない虹色をしていた
触れてみると少し痛い
色のない虹色をした
花弁にふれた指先から
血が滲み出た
**

血のなかには
耳のような目があった
耳のような目は
私の目の声を聴いていた
私の声のなみだを食べては
架空の夜に咲く月になって
鳥を育んだ
***
架空の夜の月の体内で
育てられた鳥は
大きな目をしながら
既知のなかの未知をみていた
ようやくやってきた
硝子越しの空から
飛び立とうとした瞬間
瞼のなかに

なつかしい

明るく黒い花を咲かせた


自由詩 月のなかの鳥 Copyright あおい満月 2017-08-17 15:32:27
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