ひとつ よせる
木立 悟





空が空を掻き毟り
空はちぎれ ちぎれちぎれる
爪 柱 軌跡 鐘
傷の音 鳴り止まぬ 傷の音


舌の渦
声の洞
青の青の檻
空の囚人


遠い遠い 雨の色から
目を離せぬままでいる
風の向かう先
やってくる先から


水の音
欠片の音
のばす手足が
羽になる音


何を望み 何を捨てる
幸せに何も寄与しない力を
破けた夜にはばたかせ
蒼は黒への坂をのぼる


雨の日の壁には何者かが立ち
風の斑を語りつづける
壁に祈る壁のように
やがて壁に消えてゆく


光のなかに立つ光
おのれのなかに消えかけながら
ささくれ ふるえ 
滴を纏い ひらかれる手のひら


硝子片に満ちた屍体が指さす海
砂につづく透明な棘
花と化石でできた卵が
打ち寄せては打ち寄せては消えてゆく























自由詩 ひとつ よせる Copyright 木立 悟 2017-08-13 08:51:00
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