黄昏時
ヒヤシンス


 黄昏時に降る蝉しぐれ。
 巡る思いは故郷に焼かれ、
 砕ける波には顔が現われ、
 存在すらも消えてゆく。

 幼子の手を引いて寺の参道をゆく。
 夢かうつつか幻か。
 奥手に望む海を見て、
 愛する人を待っている。

 黄昏時の幻影。
 黄昏時の官能。
 黄昏時の衝動。

 未だ開かぬその目でもって、
 迫りくる闇夜を凝視するのか。
 心の奥底で蝉しぐれが降りやまない。
 


自由詩 黄昏時 Copyright ヒヤシンス 2017-07-29 06:39:39
notebook Home 戻る