鉄格子からの空
宇津田詩能

鉄格子から空を見る
空の下、空の向こうには
俺の青春があった

スパイスのにおい
下水と小便、どぶねずみ
道を行くヤギや牛
裸足の子供達
原色の寺院
バスの背中に乗って
大陸を駆け巡った日々

空よ、今お前は何を見ている?
バックパックを背負った俺を
見守っていた空よ
リノリウムの床の上
鉄格子の窓の中
キリストにもなりきれず
ベッドに磔になった俺を蔑むか?

空よどうか、遠い彼方のみんなに
伝えておくれ
この空の下
風に吹かれていった遠い青春の杯を
彼らとともにできた悦びを
空よ、お前が俺の上にあるかぎり
俺はその甘酸っぱくほろ苦い杯と
共にある

飛行機が流れていく
かつての俺を乗せて流れていく
飛行機が流れていく
俺の心は飛行機雲のよう
飛行機が流れていく
そして俺は鉄格子の中


自由詩 鉄格子からの空 Copyright 宇津田詩能 2017-07-02 11:35:58
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