ビニル箱がバイオレットに並び・はや私は夜に気づく
(高円寺南三丁目の夜)
バイオレットにビニル箱が廻り・はや私は夜に気づく
(水晶体の所有する夜)
ビニル箱がならび まわり・ふくらみ・尖りして
(わたしに ゆるされた よる)
*
すべてそれらは
すべて 視覚らにかんして
幾層もの玉葱的トートロジーを連れてくる
じっさい現代的な皮膜だ
(私たちに気づかない)
けれどもそれらは時をつらぬいて
光る できごとたちの
(親であり子でもある)
グロテスクな 現在という
なまの肉塊なのだろうか
*
夕方 きみをみつめるとき
それだけでは終われないのだ
遠い時間をなつかしむように
ことばのもつれを指でほどいて
ハモニカの薄あかいしらべが
わたしのなかのけだものを吠えさす
畏れの横で邪気のない悦びがねむる
未来にも或いは 過去にも
わたしたちはもう居ないだろう
ひとつの歌をうたうように
心は 振るえながら近づいていく
だがそれだけで終われないのだ
夕方 きみをみつめるとき