メルヘン
岡村明子

かなしい
かなしい
かなしい
音が
三回して

水たまりの鯉は
のたうちまわっていました

おたまじゃくしは
海の中で目を白黒させていました

砂漠では
珊瑚が立ちつくしていました
枝にかかったわかめが
すっかり干からびていました

らくだは
氷河の上で脚をつるつるさせていました

マンモスが
やしの木の下で汗をかいていました

空を見上げると
大きなエイが飛んでいました

終わりました

告げる人は誰もいません

最後の日に
メルヘンは必要ないのです


自由詩 メルヘン Copyright 岡村明子 2003-11-15 23:15:45
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