その鍋に
オイタル

その鍋に火を入れよ
その朝を始めよ

倦怠は凛凛と暁の空を巡り
焦燥は烈々と白髪を靡かせる
緩い歯茎は寒冷なる蒼天の下
せわしくその切れ端を鳴らし
火を抱える膝頭は既に下る階段を
斜めに崩れ落ちんとはする
崩れ落ちんと
だがしかし

その鍋に火を入れよ
その朝を始めよ
労働の甘やかな香りと
飲み下せない後悔の酸味
薄い生活の肌触り
高らかに鳴る戦闘開始の耳鳴りに
渡りゆく飛蚊症の虫たち
それらすべてを飲み込んで

その朝に火を入れよ
その鍋を始めよ
鉄製のその鍋を
黒光りする鉄製のその鍋の勇気を
輝けるその朝に
その鍋の火を入れよ
早く


自由詩 その鍋に Copyright オイタル 2017-05-14 12:55:46
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