桜花
ただのみきや

桜のように咲いて桜のように散った
そう言いたいのか


生きてさえいれば何度でも桜は咲くのに
敗けても焼けても国は残り桜は咲くのに


桜花よ
秘匿のために付けられたというその名
なんという美意識
なんという狂気
敵が「馬鹿爆弾」と呼んだそれは
目的を果たすもの殆ど無く
爆発炎上し海の持屑となった


桜のように咲いて桜のように散った
そう言いたいのか


巡行ミサイルに人は乗らない
迎撃ミサイルにも人は乗らない
遠くでボタンを押せば遠くで人が死ぬ
寄せては返す映像と音響と活字の惨劇
次のニュースの波が浚ってしまうまで


桜花よ
美と狂にゆれながら風に舞うものよ
今も昔も変わらない
人も昔と変わらない
この国ではいつだって美と狂だ
花でも人でも


だが大義はもういらない
かつてと同じでもその真逆でも
咲くのも散るのも大義のためなんて真っ平だ
愛でたければ愛でればいい
肴にしたけりゃ肴にしろ
切り倒そうって言うのなら上等だ


桜花よ
二度と大義を纏うな
その美も狂も存分に自分のものとせよ
気前よく見せびらかしてやれ





                  《桜花:2017年4月12日》









自由詩 桜花 Copyright ただのみきや 2017-04-12 21:24:05
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