こぼれ ひらく
木立 悟







夜は融けて立ち昇り
路と壁の亀裂を埋める
通りに捨てられたものに触れ
無機を有機に変えてゆく


階段 廊下
屋根にあふれ
器の水は
空の光にそそがれる


はざまのはざまに在りながら
地は地のままに遠去かる
流れ流れる 夜の結露
息つぎに満ち 笑みに満ち


思い出のなかの縦線
街を咬んだままの光
どこからかちぎれ 飛ばされて
枝のなかに翻る旗


けだものよ わたしは
光を数えられない
突き刺さるみなもとを
ただ愚かに見つめ返す


手のかけらの集まりの手が
夕暮れに向かいひらかれて
煙る夜を拾いながら
夜となって消えてゆく




















自由詩 こぼれ ひらく Copyright 木立 悟 2017-03-30 22:19:58
notebook Home 戻る