新世界
英水

パチ パチ (拍手の音)
パチ/ オキテヨ

新しい世界はいつだって、制服を着てやってくる
下ろしたての制服に袖を通し
黴の匂いを嗅いだ

ボタンの悲鳴
にゅ、ぷるん にゅ、ぷるん

すると新しい世界に立っている

 新世界へようこそ
 新しい世界では、全てのボタンが肉球だった/


  肉肉しいボタンを眺め、
  茶番だな
  そう呟く僕は その日 夢を見た

   僕の喉の奥の井戸に
   体液がなみなみと押し寄せ
   底からキノコが湧き出してくる

    瞬間、僕の喉は停止し
    死ぬことが怖くて堪らなくなった

     気がつくと肉は全て溶け去り
     寒い凍土で剥きだしの青い血のまま横たわっている 

      地球の裏側にある東京で
      僕は、喉から飛び出すキノコを押し込むために
      必死に唾を飲み込んでいた

次の日、僕は生きていた

新しい携帯を手に入れるために
携帯ショップ、CoCoDocodaへ向かう

オキテヨ
オキテヨ

ハロー ワールド、スルー肉球

僕は君に向かう
肉球携帯をスルーして、君に到達しようとする
トルリルラリル トルリルラリル
ガチャポン
(ただいま、おかけになった。。。。)
(ただいま、おかけになった。。。。)
(ただいま、おかけになった。。。。)
留守電の金属質な女性の声が木霊している

それから

君からの電話はまだ来ない


自由詩 新世界 Copyright 英水 2005-03-08 07:19:32
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