あるいは夏風のなかで
動坂昇

聴いてくれなくても
いいよ
息づいた
鎖骨のくぼみにすこしだけたまって
あとはみんな流れるよ
 
疲れた首
 
あなたに雪を投げる子ども
溶けて
白のうえに残っていた ふたかたの
くちびるにはすこしも似ていないふぞろいな記録まで
跡もなく消えて
 
かなしいことはもうなにもないよ
 
あつい よね 
 
無防備な乳房のような日傘を差して日射しのなかにいなくてもいいよ
笑ってもいいし笑わなくてもいいよ
ただワンピースの空ばかり
着ていてよ
そうすれば季節の終わりの逆光のおかげで網膜に強くはりついて
しばらくは見えなくなることなんて
ないから


自由詩 あるいは夏風のなかで Copyright 動坂昇 2017-03-28 03:45:30
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