黄金の虫
ひだかたけし

黄金の虫が
炎に包まれ
檻の中から
飛び立った
見学していた
子供達の間から
歓声が上がった

黄金の虫は
ドーム状の
天井近くまで
舞い上がり
ふらふら堪え揺れ
すっと力尽き
コンクリートの床に
コツンと音を立て
落下した
子供達の間から
罵声が上がった

黄金の虫は
すっかり焼け焦げ
黒ずんでいた
よく見れば
酷く醜く年老いていた

[残念だ、もう少しだったのに、残念だ]

死にかけている黄金の虫の声が反響し
渦を巻きながら頭蓋に木霊する

[力が足りなかった 
 後少しだけ 力が足りなかった
残念だ 残念だ]

気付くと、
渦巻く木霊の中
黄金の虫は息絶え
その骸から
鮮やかな紫の微光が
いつ終わるともなく
放ち続けられていた。



自由詩 黄金の虫 Copyright ひだかたけし 2017-03-16 16:13:36
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