果てや 彼方
木立 悟





呼ばれ
現われ
戻れなくなったものたちが
一心不乱に花を愛でている


なびくはずのないものがなびき
冬はひとたび その身を隠す
鏡のなかを
動くきざはし


進まぬものが川を埋め
水はあふれ どこかへと消え
光は洞の天を染め
流れをその場限りの生きものに変える


何も揺らさぬ風が来て
涙をさらに増してゆく
会えぬものどうしがふるえ
響き ふるえ 響いてゆく


凍った川の上の橋
河口を曲げる金の光
上下に移る景のはざまを
冬は歩み去ってゆく


花のなかの氷山
花のなかの龍
羽のある墓標の群れを
ひとつひとつ 霧に変える手


つぶやき
花のひらく音
ひとつの淡い波となり
やがて戻る指をひたす
























自由詩 果てや 彼方 Copyright 木立 悟 2017-03-15 20:04:53
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