夜に沈む
ヒヤシンス


 黒い手鏡にお前はお前の影を映し
 真夜中に発汗する。
 ぬめりを帯びた白い肌はうっすら染まり
 不安の糸をその指先に絡めた。

 不協和音の営みがその役割を終えても
 残された不安はその場に居座った。
 方位磁石の針はぐるぐる回っていた。
 時計の針はぴくりとも動かなかった。

 真夜中の珈琲は誰かの血の味がした。
 何気ない動作は新たな不安を生んで
 憎らしい部屋に線香の煙を撒いた。

 ひっそりと自分の名を刻むお前の悲しみを
 黒い手鏡は重たく映していた。
 窓を開け放つと先の見えない夜が沈んでいた。
 
 
 


自由詩 夜に沈む Copyright ヒヤシンス 2017-03-04 04:11:45
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