病棟の窓辺
朧月

その病棟にいくには
重い扉をあけなければならないのです
細い腕ではあけられない扉のむこうに
あなたがいるのでした

あなたは窓の外をみるのがすきで
夕焼けも青い空も
全部写真におさめているのでした

うまくとれたかい
老婆が声をかけて
その返事を待たずに部屋へもどり
いれかわりに若い看護師さんが
だれかの命のお伺いに走る

私はけして
さようならを言わず
またねと部屋をでるけれど
あなたは妙にはっきりとした声で
さようならと言うのでした


自由詩 病棟の窓辺 Copyright 朧月 2017-03-02 20:21:58
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