ないものねだり
やまうちあつし

世界の半分は
届かない手紙でできている
バファリンの半分が
やさしさでできているように

わたしは青い魚になって
行方の知れない手紙を探す
ふるさとのような街
海底のような夜

言えてないことを伝えるために
今ある言葉は焼かれねばならない
火をつけるライターが要る
だから焦がれる
もっとせつないものを
もっとはかないものを
もっともかわらないものを
もっともはてしないものを

わたしはねだる
ないものを

あなたは苦笑いするだろう
いつものマフラーと手袋
いつかと同じ手の振り方で

それがいちばん
比類ないのに


自由詩 ないものねだり Copyright やまうちあつし 2017-02-26 16:41:08
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