フラグメンツ  雪どけ
AB(なかほど)

北へ

 南へ行こうと思う
 さよならと
 背を向けて



        梅林

         もう一度振り返ると
         梅の花にも似合わぬ
         二月の風が吹く
         少しずつでいいよと
         毎年吹く風が



雪々

 世界の涙に溶けそうな
 雪々に
 足跡をつけて行く
 その足跡もすぐに溶けて行く

 雪 降る げん
 そこに 雪 降っとるげん



       冬になればのたれ死ぬだけのキリギリス

        僕らの明日はどっかにつながってるんだ
        さよなら
        なんて言うもんか
         って
        鳴きつづけて
        ぱたりと
        絵本が倒れるように



灰と雪

 しろ
 とおもっていました
 はいをゆきにまきました

 とけてなくなることは
 ないのです



      しらやまさんのこと 8

       もう会えない君へ、
       山 白く 輝いて 
       まぶしいよ



格子

 今日 
 雪 
 降って 
 消えた

 ことばは
 とんと
 降って
 こない



        ジミーと青い空

         もしかしたら君のほうが
         薄い氷の上を歩くような毎日かもしれないのに
         ねえジミー
         たったそれだけで
         まだ青い芝生の上に出てみようか
         と思ったんだ



無色透明

 もうすぐ
 溶けてなくなるのかな
 そうかもしれないね
 ほら
 手をつなごう
 小さい頃の君に会うため
 手をつなごう



        トキは来ない

         藻採り雪の近づくと
         炉端できゅうきゅうと
         支度をする祖母は
         乙女に変わる



白の終わり

 雪が溶けるように
 君のなかから消えてしまう
 それは僕の意志でもなく
 らいららい
 と
 誰かの春待つ鼻歌にも溶けて



        明日降る雨が

         明日降るはずの雨が
         雪になるという
         いたたまれない気持ちで
         坂道おりていくと
         君の住む町角ではもう
         もう静かに積もりはじめているのだろう
         と思えた





 誰かさんが見つけた
 幸せの花匂う頃
 北の森では
 最後の吐息が
 ちっちゃいまるで
 おわり



        要冷凍

         夏子は世界地図に
         それをひとつひとつ置いてゆく
         北極、南極、シベリア
         マッターホルン
         融けてしまうのは
         明日かもしれない



冬越し

 昨夜  
 玄関の引き戸を滑らすと
 どこからか冬越しバッタが飛んで来て
 奥の方からうすく漏れる光に
 恍惚の目を滲ませていた


   





自由詩 フラグメンツ  雪どけ Copyright AB(なかほど) 2017-02-20 23:39:19
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