カンセイしたマスク
狩心

感性は変わる
昔良かったものが今では何も感じなくなり
昔嫌いだったものが意外と良いのではと感じる
完成は変わる
完成するつもりで目指してきたのに
実は少しずつ崩れて息、液化するのを
目指していたなんて
建造物は構築されながら溶かされていく
液化されたものはガス化し
有毒ガスとしてまたはアロマテラピーとして
歓声を睡眠に誘い、慣性を助長させる

純粋な人間である為に 化け物に成らない為に
ガスマスクを着用するのだが
それでは顔を失ってしまう
口も封じられてしまうから
意思の伝達はジェスチャーとなり
設けられたタイミングと場での説明よりも
知らぬ間に行ってしまうアクションの方が価値が上がる
体験は過去に戻れない事への黙祷であり
絡み合う黙祷が音の無いガッショウとなり
我の証明と我の昇天を意味する

もう何年も前から色を失った白黒世界で
時々目の前に展開されるカラーの出来事は
本質とは違う表層でしかないのだとはっきりと分かる
マスクのガラス越し、しかも視力が低下した分厚い眼鏡着用で
過去のように単純に対象を感じ取る事が出来なくなってしまった
すべての皮と肉は燃え尽き、骨だけの世界
ただしワタシは真っ黒いマントの下に
カラーの肉体を携えている
ここぞという時以外、マントを広げ
マスクを脱ぎ去り、ヴァンパイアのようにキセイを発する事はない
それはセイメイを削ってもなお挑まなければならない時だけである

何度も繰り返されたそれは
焼け爛れた皮膚に沢山の惑星の衝突で出来たクレーター
そこに沢山の顔が埋め込まれており、
マントを広げた時にうるさいほど騒ぎ立てる
ワタシはそれ以上に大きなキセイとアクションでそれらをねじ伏せる
破裂した顔達の痛みで倒れそうになるが、そこで倒れたら何も成せない
罪を受け入れてやっと、自分にとって正しい事が行える

沢山の失ってきたカンセイは
兵共が夢の跡だが
ワタシの潰された目が
それらの夢をまだ見続けている
ワタシがヴァンパイアであって
何度も浴びるシンボルの太陽の光に燃え尽くされて
私自身も光になってしまう時、後悔はしないよう
いつでもシになる事を 恐れてはいない
それが理解されない事であっても ワタシはシを
選ぶのだ


自由詩 カンセイしたマスク Copyright 狩心 2017-02-17 10:40:42
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