おやつ
梓ゆい

話がしたい、話を聞いてもらいたい、と思ったら
泣きたくなった。

今は一個のどら焼きを
一人で食べている。
分ける人が居ない
半分のどら焼き。
間違えて淹れそうになったお茶に気が付いて
父の湯飲みを戸棚にしまう。

私の後ろには
穏やかに微笑む父の遺影。
手前には
今朝一番に淹れた緑茶が
冷め切って置いてある。

「ありがとう」と言って伸ばす大きな手
どら焼きを受け取り
嬉しそうに頬張って緑茶をすする父の姿を
今日も思い出す。


自由詩 おやつ Copyright 梓ゆい 2017-02-16 20:03:35
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