こっちから
竜門勇気


憎い憎いと
与えられた不幸で
踊る俺を人が笑う

次は
こっちから
笑おうと思うの
彼女は言って
そして黙った

彼女は
腐りかけた
地面を見て
何かを知ってる
みたいに振る舞う

そして俺が見ている月のした
影を残して去っていく

醜い醜いと
声が聞こえる
気を失いそうなでかい声で

紙くずを噛み砕き
耳に詰める
そして月のした
影しか見えない夜を行く

夜は触ったり喋ったり
遠ざかる意識にロープをくくって
優しく不安を首に巻いて笑うんだ

次はこっちからって
思って笑い返すの
彼女はつま先を眺めて
ふりむいて
笑うよ
笑うよ

俺は夜だったんだ
もう俺は夜になってたんだ
不安と不安定が
全てになったんだ

どす黒い自分の影
光り輝く彼女の影
悪夢のような気持ちで
空に向かって叫んだ

次はこっちからって
思って笑い返すの
彼女はつま先を眺めて
ふりむいて
笑うよ
笑うよ


自由詩 こっちから Copyright 竜門勇気 2017-02-12 11:43:06
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