冬と祈り
木立 悟





果物の皮
草の波
腹をくすぐる
紙の飛行機


割れてしまう
雪の空
痛みはわずか
銀の柱


通りの名前
風から剥ぎ取り
霧に投げつけ
午後の川となる


忘れ物の山
また紙を千切る
一瞬の穂の径
丘の上の青


彩雲の群れが幾つも幾つも
水底の森をすぎてゆく
暮れの光が泡立てる鉄
冬の向こうへ手をのばす冬


鳥の声 けだものの声
あいの子のあいの子のあいの子の声
誰も置き去りにしたりはしない
標の終わりの終わりまで


川が凍りつくのを見とどけた後も
死なない老人は歩きつづけた
氷上の道がいつか
自身を呑み込むその日まで


明け色の曇が
すべての滴を揺らしている
ゆうるりと踏みしめるひとつの足
等しく無慈悲な笑みに満ちる
























自由詩 冬と祈り Copyright 木立 悟 2017-02-11 23:15:27
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